潮が引いた磯を歩いていると、たまに手が止まる瞬間があります。
足元の岩に貝が付いている。潮だまりにタコがいる。手を伸ばせば届く。
でも、ここで獲っていいのかが分からない。
しかも磯は、沖で竿を出すよりよほど厄介です。貝や海藻には第一種共同漁業権がかかっていることが多くて、区域の中なら組合員以外は獲れません。境目は当然、岩には書いてありません。
漁業権、県の漁業調整規則、特定水産動植物。名前は知っていても、いざその場で調べようとすると、県のサイトのPDFを開いて、条文を追って、自分が立っている磯がどの区域なのかを見当で当てる、という話になります。濡れた手で、片手で、日差しの下でやる作業ではありません。
そこで、その場所・その日に何が獲れないのかを地図で見られるサイトを作りました。
無料で、登録もアプリのインストールも要りません。ブラウザで開くだけです。
まず、地図を開くと出るもの

作っておいて何ですが、この地図は「獲っていい」を教えるものではありません。その話は後ろでもう一度書きます。
使い方
やることは、地図を動かすだけです。

- 画面のまん中に固定された十字へ、自分が立っている磯を持ってくる
- 下のシートに、その地点の県と漁業権が出る
- 「詳しく見る」で、採捕禁止と条件つきのカードが並ぶ
地点を「タップで選ぶ」形にしなかったのは、スマホを片手で持つと、狙った場所が自分の指で隠れるからです。磯の上で、濡れた手で操作するなら、十字に合わせるほうが確実でした。
獲ってはいけないもの

赤い✕が付いたカードが「採捕禁止」です。理由が3種類あるのがひと目で分かります。
- 法律で禁止 … あわび・なまこ・シラスウナギ(全国どこでも)
- 漁業権の対象 … さざえ・うに・わかめ(この区域では組合員以外は獲れない)
- いま禁漁期間 … ミルクイ・ホンダワラ・アマモ(判定日で切り替わる)
磯で手が伸びるものが、だいたい全部ここに並びます。これが現実です。
条件つきと、道具の話

黄色い三角が「条件を守れば獲れる」ものです。大きさの制限が付いています。
その下に道具・漁法が並ぶのが、地味に効きます。香川だと、たも網も、やすも、は具も、素手(徒手採捕)も「条件つき」で、ひき縄釣(トローリング)は「使用禁止」。県ごとに違うので、遠征のときほど見る価値があります。
根拠までたどれる

カードを押すと、なぜそうなのかが出ます。条文の出どころ(香川県漁業調整規則)と、その原文の引用まで付けてあります。
出典は県の掲載ページへリンクしています。PDFの直リンクにしなかったのは、押した瞬間にダウンロードが始まって、前後の説明が読めなくなるからです(原本のPDFへも別に行けます)。
磯で効くのは、たぶん魚種検索のほう
右上の🔍から魚種を選ぶと、その魚種が獲れない場所が地図に出ます。

サザエだけで全国1,292区域。行く前にこれを見ておくのが、いちばん手っ取り早い使い方だと思います。「この磯は白い、隣の入江は赤い」が先に分かれば、現場での迷いがかなり減ります。
ただし画面にも書いてあるとおり、対象外=獲ってよい、ではありません。別の魚種の区域かもしれないし、県の規則が別にかかっているかもしれません。
このサイトが「言わないこと」
ここが一番大事なところなので、はっきり書いておきます。
「獲っていい」とは言いません。
画面に出しているのは、獲ってはいけないものと、条件つきで獲れるものだけです。カードに出てこない魚は「獲っていい魚」ではなく、確認した資料の中に禁止の規定が見つからなかった魚です。見落としているかもしれないし、資料がまだ揃っていないかもしれない。だから「白」とは書きません。
もうひとつ。そもそも遊漁者が獲れない魚には、大きさや期間の条件を出していません。アワビやナマコのように全国で禁じられているもの、漁業権の対象になっているものは、規則に体長制限が書かれていても、それを並べると「その大きさなら獲っていい」と読めてしまうからです。
磯だと、この誤読がそのまま密漁になります。アワビとナマコは漁業法で遊漁者の採捕が禁じられていて、罰則も軽くありません。「大きければいい」ではなく「触らない」です。
最終的な判断は、地元の漁協や県の担当部署に確かめてください。このサイトは、確かめる前の当たりをつけるためのものです。
中身は公的資料だけ
出しているものは、全部たどれるようにしてあります。
| 何を | どこから |
|---|---|
| 第一種共同漁業権の区域と対象魚種 | 海しるAPI(海上保安庁) |
| 都道府県ごとの採捕ルール | 各都道府県の漁業調整規則ほか |
| 遊漁で使える漁具・漁法 | 水産庁の資料 |
| 全国で禁止されている水産動植物 | 漁業法第132条・同施行規則 |
有効期限の切れた免許や資料は、表示にも判定にも使っていません。原資料には期限切れがそのまま残っていることがあるのですが、更新されたのか本当に終わったのかは資料からは分からないので、確認できないものは出さない、という方針にしました。
県別のページもあります

「香川県 漁業 ルール」のように検索して来た人向けに、県ごとのまとめページもあります。地図と同じデータから作っているので、地図と県ページで書いてあることが食い違うことはありません。
おわりに
ルールを調べるのが面倒だから、なんとなく手を出す。手を出すのが怖いから、結局何も獲らない。磯にいると、このどちらかになりがちです。どちらもつまらないと思っていました。
調べるところの手間が減れば、その分だけ海で遊べる時間が増えるし、「知らずにやってしまった」も減るはずです。潮だまりの前で同じように手が止まったことのある人に、届けば嬉しいです。
気づいた間違いや、載っていない資料があれば教えてください。直します。


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